信楽と備前 焼締陶器
備前焼と信楽焼は、それぞれ日本六古窯のひとつとして長い歴史を持つ焼締陶器です。一見無造作に見える色合いや造形も、創造意欲をたぎらせた陶芸作家たちの深い経験と美の追究から生まれました。
身近で使う花器や食器など価格もお求め易いものを中心にいろいろ展示しておりますので是非一度、ご覧くださいますよう、一同お待ち申し上げております。
焼き締め
半磁器、炉器ともいい陶器と磁器の中間的な性質を持ち、とても堅牢で耐水性があり、古くは古墳時代より日用品、また装飾品として制作されてきました。温かくてあきのこない渋さと重厚さ雅味をそなえた民窯としてとても人気を集めています。陶土は窯を使い1200℃〜1300℃で焼成されることによって、色や模様がさまざまに変化し、まさに土と炎の織りなす素朴で美しい味わいのある焼き物に仕上がります。中国の紫砂器、ドイツのライン炉器、イギリス炉器と世界各地で作られていますが、日本の焼き締めは一部を除きあまり装飾を施さず、焼成の過程でできる地肌の自然の風合いを活かすことに特徴があります。
信楽焼について
滋賀県甲賀市信楽町を中心として作られている、狸の置物で有名な焼き物ですが、その歴史は古く、壺、甕、擂鉢などの日用品づくりの始まった平安時代の頃までさかのぼります。室町・桃山時代以降、茶道の隆盛とともに「茶陶信楽」として茶人をはじめとする文化人に親しまれ、珍重されてきました。江戸時代には山むこうの名産品宇治茶を運ぶ茶壺から土鍋、徳利、水瓶などの日用品の生産で栄えました。焼き締めとしての信楽焼の特徴は、付近の丘陵から産出する良質な陶土により焼成後赤く発色する緋色、灰が自然にかかったことによる自然釉の付着、薪の灰に埋まり黒褐色になる「焦げ」などです。古琵琶湖層の粘土からなる素地の荒い細かな石粒が信楽特有の土味を発揮して、素朴であたたかい情感を出し、土と炎が織りなす芸術として“わびさび”の趣を今に伝えております。
備前焼について
岡山県備前市周辺にて作られている陶器、焼き締めを備前焼といいます。平安時代に作られていた須恵器から発展し鎌倉時代には現在のような陶器が焼かれていたと言われております。「田土(ひよせ)」と呼ばれる水田の下から掘り起こした土と山土、黒土を混ぜた土は鉄分を多く含み備前焼の特徴である茶褐色の地肌をつくりだしております。古くより備前焼は「落としても壊れず、水が腐らず、酒がうまい。」と言われて実用性にとみ、高い温度で堅く締められた品々はひとつとして同じ模様がありません。薪の灰が融けて生地にくっ付く事によりできる「胡麻」、金・青・灰色などのさまざまな模様の出る「桟切」、赤や白の色抜けの出た火襷(ひだすき)や牡丹餅(ぼたもち)など使い込むほどに味が出る、派手さはないものの飽きのこないという特徴を持っています。